<基礎研究> -21世紀型のより安全な新しい医療の開発-

新しい医療である再生医療を実現するために、統合的な基礎研究を以下の3つの柱で行っています。

1)血管新生の遺伝子治療:

  狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患に対する冠動脈バイパス手術には、外科手法的な限界があります。簡単に言うと、細すぎる血管にはバイパス手術を行うことが出来ないのです。しかし、日本人、特に日本人の糖尿病で狭心症のひとの冠動脈は非常に細いものが多いのです。そのため、現在治療においては、非常に細い冠動脈が支配している領域に虚血(簡単には酸素不足)が生じていてもバイパス手術が施せないというのが現実であり、外科の限界です。人間の心臓は、そもそも新しい血管を作り出す力を持っています。その力を増幅させる遺伝子情報を直接その部分に投与して、その血管の新生をものすごく増幅させることにより、手術でつくるバイパスの代わりに何本もの小バイパス血管を新しく生じさせようという試みを行っています。この新しい治療法が完成すれば、現在のバイパス手術の、その限界を超えるための治療法となるのです。
 別の幾つか大学病院では、遺伝子の代わりに、血管を作り出すもとになる「幹細胞」というものを移植して、手術でつくるバイパスの代わりに何本もの小バイパス血管を新しく生じさせようという試みがなされています。


2)骨格筋細胞療法:心筋梗塞を治すために、死んだ心筋の代償細胞をつくる。
機能代償による再生:骨格筋ポンプを用いた心室形成術の検討。

心臓は、個体の臓器代謝や機能の保持にかかせない循環機能を司り、これにより生命維持の中枢と位置づけられます。また、個体発生においてはいち早く分化を果たし、他の臓器の分化形成をおしすすめる役割を担っています。しかし、この特異的に分化した機能を有する心臓には、再生能がありません。そのため一部の心筋細胞に障害が生じた場合、障害心筋の機能を他の心筋が代償しようとして、過度の負担を受けてしまいます。このような心筋障害は、雪だるま式増大によって、最終的に重症心不全の状態となり、生命維持が困難な状況へと進んでしまいます。現在、障害心筋の機能代償の治療法としては、移植以外にないと言えますが、移植医療はドナー不足などの問題により、円滑に機能していないのが現状です。ここで、我々は障害心筋を再生すること試みています。骨格筋細胞を移植して心筋機能を代償させて、再生させるというアプローチです。また、骨格筋を心筋細胞に変化させることができないかという研究をすすめています。

3)心筋保護・体外循環・オフポンプバイパス:

心臓を止めて行う手術に際して、心筋細胞のダメージを最低限に留めるために新たな心筋保護法及び体外循環法の研究をすすめています。また、最近の新しい手術法として、心臓を止めないで冠動脈のバイパス(オフポンプバイパス)を行われていますが、その手術を出来るだけ安全に行うために、センシティブで詳細な血行動態指標が必要となってきています。その指標の確立に取り組んでいます。

<臨床研究> -より良い手術、クオリティーの高い医療の提供のために-

心臓の病気は、子供の時に手術が必要になる生まれがらの先天性心疾患と、大人になってから問題になってくる後天性心疾患に大別されます。さらに心臓の手術にどうしても必要な手段が、体外循環及び心筋保護になります。

1)先天性心疾患に関しては、その手術時期や、何回も手術を重ねなければならないような病気が、難易度の高い病気になります。その必要な手術をよりよい時期に、より安全に行い、かつ手術後の状態(QOL:quality of life といいます)がよくなるための、検討を日々行っています。
具体的には、Fontan手術に対する段階的アプローチ治療戦略の検討、Pulmonary autograft によるRoss手術、ファロー四徴症に対するConotruncal repair法、などです。

2)高齢者を中心に後天性心疾患、特に弁膜症や狭心症・心筋梗塞などの病気が増えてきています。その中で、我々の施設は約30年前から、弁膜、特に人工弁置換手術で先進的な治療を続けてきています。その経験を生かし、人工弁手術における至適手術時期の検討や、体格に対する至適人工弁サイズの検討をすすめてきております。
さらに、昨今急増している冠動脈バイパスの手術おいては、現在人工心肺を用いずに行う術式も取り入れ、冠動脈内皮細胞機能に関する検討を行っています。

3)心臓の手術には、心臓を止めて行うために、体外循環を維持するために人工心肺という装置と、心臓を仮死状態に保つ心筋保護液というものが必要になります。この両者に関しては、心筋保護では重症後天性心疾患に対する統合的心筋保護法の臨床意義の検討を行い、体外循環に関しては、肝細胞内ミトコンドリア代謝の検討や、体外循環による凝固系障害のメカニズムの解明の研究を推し進めています。